2013年02月04日

ステロイドはもういらないアトピ-の治し方



まえがき

 アトピー性皮膚炎は原因、増悪因子が多様で、さらに症例ごとの症状の違いが大きいという特徴があります。患者さんの生活環境の変化や加齢により、症状もどんどん変わってゆきます。乾燥皮膚(肌)、アレルギー体質、環境因子、食物、ストレスを含めた心身症、感染症など様々な因子が、それぞれ多い少ないはあるにせよ発症や増悪に複雑に絡んでいます。
 そのため、治療をするにしてもあれが効く、これが効くという決定的な治療法はなく、原因と考えられるものそれぞれに対して同時にいろいろな方向からの治療を行う必要があります。
 さて、ステロイド外用剤の使い方について、最近、多くの患者さんたちが不安を訴えています。専門家の集まりである皮膚科学会でも意見のわかれるところですが、使いすぎや長期間の使用がからだによくないのはだれもが認めるところです。
 ステロイド外用剤を使うと、一時の改善には有効ですが、さまざまな副作用があり、繰り返し長期間使っていますと、アトピー性皮膚炎はステロイド外用剤の使用量の多い少ないに左右される依存状態になります。さらに知らず知らずのうちにアトピー性皮膚炎そのものが重症化することさえあります。
 かくいう私はアンチステロイド派ですが、まったく使わないというわけでもなく、症状によっては使うこともあります。ステロイド外用剤は安易に使うのではなく、その功罪をわきまえた皮膚科専門医の指導の下で使われる分には問題ありません。
 どんな分野でも専門家は、ややもすると片寄った、独善的な判断の枠をつくってしまい、そのなかに安住することがあります。とくにまだ評価が定まっていない事項などについてはそのような事態に陥りやすくなります。
 医療に従事する者はこのような危険性があることをよく認識して、常に平衡のとれた判断ができるようにしなければなりません。アトピー性皮膚炎に対するステロイド剤の適用などもその例でしょう。金科玉条のごとく、どんなことがおこっても、なにがなんでもステロイドは絶対使わないのだとがんばるのは考えものですし、なんでもかんでも第一選択だとどんどん使うのも問題です。
 アトピー性皮膚炎治療の基本はステロイドの使用を極力抑えて、スキンケアの励行が基本です。スキンケアには皮膚の保湿と清潔に保つという二種類があります。この両者を上手に用いて治療することによって、難治性のアトピー性皮膚炎も薄皮を剥いでいくように徐々に治っていくものです。同時に一番大切なことですが、「かならず治るのだ」と勇気づける患者さんへの心のケアが必要であることはいうまでもありません。
 また、アトピー性皮膚炎は治療が難しく、経過が長くなるため、どうしても皮膚科専門医以外の指導による民間療法がもてはやされがちです。あれやこれやの、妙な治療法に飛びつくのではなく、皮膚科専門医のきちんとした指導の下で、アトピー性皮膚炎の治療を受けることが大切です。
 本書では、混沌とした状況にあるアトピー治療の現実に対して、私自身のアトピー性皮膚炎の治療経験から得た知識と診療法をわかりやすく紹介し、スキンケアの重要性を解説しました。難治性のアトピー皮膚炎、とりわけ成年期のアトピー性皮膚炎に苦しむ患者さんの参考になれば幸いです。

 一九九八年一〇月末日
藤澤皮膚科院長 藤澤重樹 

 『ステロイドはもういらない アトピーの治し方』・もくじ
 まえがき
 第1章 アトピー性皮膚炎とは、どんな病気か?
1 アトピー性皮膚炎の歴史 
2 アトピー性皮膚炎と遺伝 
3 アトピー性皮膚炎の原因は 
4 アトピー性皮膚炎の型(タイプ)別分類 
5 アトピー性皮膚炎の診断基準と他の皮膚炎との区別 
6 アトピー性皮膚炎は、よくなったり、悪くなったりする 
7 アトピー性皮膚炎の症状の年齢型 
8 アトピー性皮膚炎の患者の悩み 
 第2章 アトピー性皮膚炎は必ずしもアレルギーではない
1 アトピー性皮膚炎とアレルギーの違い 
2 アトピー性皮膚炎と抗体 
3 感染症が減って、アレルギーが増えた 
4 アレルギーとはなにか? 
5 アレルギー以外の原因 
6 IgEとアトピー性皮膚炎 
7 アトピー性皮膚炎の子どもの予防接種 
 第3章 食物アレルギーと金属アレルギー
1 食物制限について 
2 アレルギーになりやすい食事のパターン 
3 食べものとアトピー性皮膚炎の予防 
4 金属アレルギー 
5 仮性アトピー性皮膚炎 
 第4章 アトピー性皮膚炎の合併症
1 感染症 
2 脱毛症 
3 尋常性魚鱗癬 
4 白内障 
5 網膜剥離 
 第5章 アトピー性皮膚炎は治る病気です
1 アトピー性皮膚炎は治る病気 
2 ステロイド剤の安易な使用、使いすぎが自然治癒を妨げる 
3 民間療法は要注意 
4 アトピー性皮膚炎の治療には、ダニ対策が欠かせない 
5 主治医と患者の信頼関係がポイント 
 第6章 ステロイド剤とは、どんな薬か?
1 ステロイド剤とは? 
2 ステロイド剤使用の危惧 
3 ステロイド剤の使用の原則 
4 皮膚科でのステロイド軟膏の使われ方 
5 私のステロイド剤の使い方 
 第7章 ステロイド外用剤の副作用とリバウンド現象
1 ステロイド外用剤の副作用 
2 ステロイド離脱によるリバウンド現象 
3 リバウンドに対する心構え 
4 だれにでもある自然治癒能力を引き出すには 
 第8章 アトピー性皮膚炎の内服薬療法
1 抗ヒスタミン剤と抗アレルギー剤 
2 ビオチン 
3 生菌製剤 
4 抗真菌剤 
5 漢方 
 第9章 スキンケアの実際
1 日常生活のなかでのかゆみ対策 
2 スキンケアの実際 
3 光線療法 

●体験手記 「わたしは自然治癒でアトピーを治しました」(五人の方々)
●アトピーことわざ集
●参考文献
●ステロイドに頼らずに、アトピー性皮膚炎を治療する医師たち

●藤澤重樹先生のモットー
 創意と工夫の皮膚科学の実践がモットー。パソコンを用いた統計処理が得意。単純なようで、実は複雑な多因子性疾患であるアトピー性皮膚炎を理解するには、多変量解析の知識が役立つ。アトピー性皮膚炎は一人一人症例ごとに症状、原因が大きく異なり、変化に富んでいる。ストレスを含めた心理的な問題をも洞察して、それぞれに合った対応を必要とする治療は、大変な労力が要求されるが、やりがいがある。「もう治ったね」と患者さんと一緒に自然治癒を実感するときの喜びは医者冥利に尽きる。
posted by 光線療法 at 12:31| フラッシュ光線療法